アンクリングとトロッティングの違い
スプリント力を高める2つの秘訣!アンクリングとトロッティングの違いをまとめてみました。
陸上競技のスプリントは、一瞬の爆発力と効率的な身体の使い方が求められる奥深い種目です。速く走るためのトレーニングは多岐にわたりますが、その中でも今回考えるのが「アンクリング」と「トロッティング」というドリル。コーチングするにあたってこのドリルの違いについて今一度確認したいと思います。
これら二つのドリルは、どちらも足首や下肢の動きを意識する点で共通していますが、その目的や使う筋肉、接地感覚には大きな違いがあります。今回は、これらのドリルの違いと、それぞれがスプリント力向上にどう役立つのかを調べてみましたので、詳しく解説していきます。
1. アンクリング:足首のバネを最大限に活かす!
目的
アンクリングは、主に接地時間の短縮と地面からの反発力の効率的な利用を目的としたドリルです。接地した瞬間に足首を素早く固定し、地面からの強い反発をダイレクトに推進力へと変える感覚を養います。
動きのポイントと接地感覚
* 足首を固定し、地面を軽く叩くように: 膝の曲げ伸ばしは最小限に抑え、足首を意識的に固めて、足の指の付け根(母指球)で地面にポンポンと軽く触れるように着地します。
* 「叩く」「突く」感覚: 地面を軽く、しかし鋭く「叩く」ような感覚が特徴です。足が地面に吸い付くのではなく、まさにバネのように弾むイメージです。
* 関与する主な筋肉: アキレス腱のバネ機能と、**腓腹筋・ヒラメ筋(下腿三頭筋)**といったふくらはぎの筋肉が中心となります。これらの筋肉を連携させ、地面からの反発を素早く、力強く跳ね返す感覚を養います。
アンクリングは、スプリントにおける「硬さ」と「速さ」を追求するための、足首に特化した基礎ドリルと言えるでしょう。
2. トロッティング:全身の連動で地面を「乗りこなす」!
目的
トロッティングは、アンクリングで培った足首の感覚を土台としつつ、全身の連動性向上、効率的な重心移動、そしてスプリントにおけるリズム感を習得することを目的としています。
動きのポイントと接地感覚
* 自然な腕振りとの連動: 肘の角度を90度程度に保ち、前後にリズミカルに腕を振ります。この腕の振りが全身の動きをリードします。
* 膝や股関節を柔らかく使う: アンクリングと異なり、膝や股関節も適度に曲げ伸ばしを行います。これは、地面からの衝撃を分散させつつ、その反発を効率的に次の推進力へと繋げるためです。
* 重心の真下で接地: 足が体の前ではなく、重心の真下に着地するように意識します。これにより、無駄のない重心移動と効率的な推進力を生み出します。
* 「乗る」「吸収し、変換する」感覚: 足が地面に接地した際に、その反発を全身で受け止め、力を吸収しながらも、それを推進力として再利用する感覚が特徴です。単に跳ね返すのではなく、地面に「乗っかる」ように進んでいくイメージです。
* 関与する主な筋肉: アキレス腱と下腿三頭筋に加え、ハムストリングス、大腿四頭筋、大臀筋といった、股関節や膝関節周辺の大きな筋肉群が連動します。これらの筋肉が協調して働き、より大きな推進力を生み出します。
トロッティングは、より実走に近い動きの中で、全身のバネ機能と効率的な重心移動を学ぶための総合的なドリルと言えるでしょう。
まとめ:2つのドリルの違い
アンクリング (Ankling)
* 主な焦点: 足首の固定と地面からの反発力の利用
* 足首の動き: 意識的に固定し、地面を軽く「叩く」感覚
* 膝の動き: 最小限の曲げ伸ばし
* 目的: 接地時間の短縮、足首のスティフネス向上
* 関与する主な筋肉: アキレス腱、下腿三頭筋
* 難易度: 足首の意識が強く、比較的部分的な動き
トロッティング (Trotting)
* 主な焦点: 全身の連動、重心移動、リズム
* 足首の動き: 自然な足首の動きの中で、地面に「乗る」感覚
* 膝の動き: 膝を柔らかく使い、衝撃吸収と推進力に繋げる
* 目的: 全身の効率的な連動、重心移動の最適化、ランニングリズムの習得
* 関与する主な筋肉: アキレス腱、下腿三頭筋、ハムストリングス、大腿四頭筋、大臀筋
* 難易度: 全身の連動が求められ、より実走に近い感覚が必要
トレーニングへの応用
アンクリングとトロッティングは、どちらもスプリント能力を高める上で欠かせないドリルです。アンクリングで足首の鋭い感覚を磨き、その上でトロッティングで全身の連動と効率的な重心移動を習得することで、より速く、力強い走りを実現することができます。
ぜひ、これらのドリルの目的とポイントを理解し、日々のトレーニングに取り入れてみてください。あなたのスプリントが、一段とレベルアップすること間違いなしです!